ISO9001認証取得で現場が本当に大変だったこと【実体験】

はじめに

ISO9001の認証取得を会社から指示されたとき、正直なところ「また仕事が増えるな」と感じた方も多いのではないでしょうか。

規格の難しい文言、書類が多い、ルールが細かい、現場が協力してくれない。

実際、ISO9001は規格の内容よりも「人」と「現場」の問題でつまずくことがほとんどです。

私自身、製造業の現場でISO9001の認証取得と、その後の維持に長年関わってきましたが、一番苦労したのは規格の理解でも審査対応でもありませんでした。

私が最初に経験したことですが、

経営者がこれからISO9001認証が必要だと言い出したこと

それから経営者による宣言、全社員を前にキックオフ

外部コンサルによる規格要求事項の説明でした。

私を含めた全社員???まったく理解不能でした。

この記事では、ISO9001認証取得の現場で本当に大変だったことを、きれいごと抜きでお話しします。

大変なことは人でした

結果から言いますと、

ISO9001認証取得で一番大変だったのは、規格の理解や書類作成ではありません。

本当に苦労したのは、現場の考え方や意識を変えていくことでした。

ルールを作るだけでは品質は良くならず、現場が「自分たちのための仕組み」だと理解して初めてISO9001は機能します。

だからこそ、認証取得を目指す際は、完璧な書類よりも現場との対話を優先すべきだと私は感じています。

現場が納得しないまま進めたISOは、必ず形だけのものになります。

ISO9001を本当に役立つ仕組みにするためには、「守らせるルール」ではなく「使いたくなる仕組み」にすることが欠かせません。

現場がISO9001に反発した本当の理由

ISO9001を進める中で、現場が素直に協力してくれない場面は少なくありません。

その多くは「やる気がない」のではなく、目的や意味が見えていないことが原因でした。

まず多かったのが、規格そのものが理解できないという声です。

専門用語が多く、なぜそれを守る必要があるのかが分からないまま進められると、

現場は「言われたからやるだけ」の状態になります。

当然、良い結果が見えない活動に対して、積極的になれるはずがありません。

次に出てくるのが、

「何のためにやるのか分からない」

「今のやり方で問題は起きていない」

という意見です。

長年同じやり方で仕事をしてきた人ほど、

「自分はちゃんとやれている」「自分のやり方が最適だ」

という意識が強く、他人のやり方や全体最適には関心を持ちにくくなります。

特に中堅層には、変えたくない気持ちが強く表れがちです。

一方で若年層は、

「上の顔色をうかがって動く」

「自分の意見を出さない」

といった状態になり、結果として誰も主体的に動かなくなります。

さらに、部署ごとに温度差が生まれるのもISO活動の典型です。

ある部署は前向きでも、別の部署は完全に他人事。

全体として足並みが揃わず、活動が空回りしていきます。

加えて、社内事情を十分に理解しないまま

あるべき論」だけを語る外部コンサルタントや、

「言うだけで現場を見ない社長」の存在が、

現場の不信感を強めてしまうケースもありました。

極めつけは、

人的・時間的・予算的な余裕を与えないまま成果だけを求める経営姿勢です。

これでは、現場がISO9001を「自分のため、会社のため」ではなく

「押し付けられた仕事」と感じてしまうのも無理はありません。

「それでも現場を巻き込むために実際にやったこと」

こうした状況の中でISO9001を形だけの制度にしないためには、

ある工夫が必要でした。

外部コンサルの排除

現場の反発や温度差を前にして、私たちが最初に決断したのは、

外部コンサルタントに頼るのをやめることでした。

コンサルの言葉は正論でも、現場の事情や空気感までは理解してもらえず、かえって反発を強めてしまうと感じたからです。

そこで「自分たちの力でISO9001の認証取得を目指す」方針に切り替えました。

まず取り組んだのは、自分自身が人に説明できるレベルまで規格を理解することです。

分からないまま説明すれば、現場に見抜かれます。

そのため、ISO9001の規格本文をボロボロになるまで読み込み、

日本語訳だけでなく、原文も英英辞典を使いながら確認しました。

一文一文の意味を自分なりに噛み砕き、

「なぜこの要求があるのか」を考え続けました。

それでも、自分の解釈が本当に正しいのかという不安は残ります。

そこで、外部の知見を得るために、

ISO関連のメルマガやメーリングリストに参加し、

さまざまな立場の人から意見や助言をもらいました。

複数の考え方に触れることで、独りよがりな解釈にならないよう意識しました。

経営者に理解してもらう

次に行ったのが、規格の解釈と、それが会社業務にどう良い影響を与えるのかを、経営者層に何度も説明することです。

経営者はお金、人、時間に多く費やすことを良く思いません。

一度説明して終わりではなく、

理解してもらえるまで、言い方や切り口を変えて繰り返しました。

ISO9001を「負担」ではなく「経営に役立つ仕組み」として捉えてもらうことが目的でした。

その上で、社内向けに規格を噛み砕いた品質マニュアルを作成しました。

規格をそのまま写すのではなく、

「自社では何をすればよいのか」が分かる内容に落とし込みました。

あわせて業務分掌を整理し、各部署の役割と責任を明確化しました。

各部署の責任者に対しては、

「規格上、社内で何を行う必要があるのか」

「それを誰が担うのか」

を具体的に説明し、指示を出しました。

このとき意識したのは、自分自身が旗振り役になることです。

人に任せきりにせず、先頭に立って動きました。

特に重視したのは、

まず経営者層と部署長に理解してもらうことでした。

現場より先に、決裁と影響力を持つ層の認識を揃えることで、

社内のブレを減らせると考えたからです。

理解者は全員である必要はない

    「やらされ仕事から現場で使う仕組み」へ

理解者は、最初から全員を目指しませんでした。

まず部署長3人の理解者を作る。

その3人がそれぞれ1人ずつ指導し、理解者を6人に増やす。

さらに、理解者6人がそれぞれ3人ずつ指導する。

こうして、理解の裾野を少しずつ広げていきました。

一気に変えようとせず、

「分かる人を増やす」ことに集中したことが、

結果的に現場を巻き込む一番の近道だったと感じています。

こうした取り組みを続けた結果、

ISO9001は「やらされ仕事」から「現場で使う仕組み」へと変わっていきました。

ISO9001が形骸化せず定着した理由

ISO9001が形だけの仕組みで終わらなかった最大の理由は、

**「やれることを、やれる形で、やり切った」**ことにあると思っています。

特別なことをしたわけではありません。

やっていることをやった、できることを積み重ねただけです。

まず意識したのは、できる人に任せるという考え方でした。

全員に同じレベルを求めるのではなく、

理解できる人、動ける人にまずやってもらう。

そして、その人には権限や役割(資格)をきちんと与えることで、

迷わず動ける環境を整えました。

次に徹底したのが、できるだけ簡単にすることです。

帳票やルールは、複雑になった瞬間に使われなくなります。

「これなら現場でできる」と思えるレベルまで、

何度も見直し、削り、簡素化しました。

また、成果が見える仕組みを意識しました。

やったかどうかではなく、

「何がどう良くなったのか」が分かるようにする。

不良が減った、手戻りが減った、探す時間が減った。

小さな変化でも、見える形にしました。

成果が出たときは、必ず褒め、評価することも欠かしませんでした。

ISO活動を「嫌々やる仕事」にせず、

「やってよかった」と感じてもらうことで、次の行動につなげるためです。

一方で、やれていないこと、やれなかったことも隠しませんでした。

できなかった事実を明らかにし、

それを誰か一人の責任にすることはしません。

「なぜできなかったのか」を全員で共有し、課題として扱う。

この姿勢が、現場の安心感と信頼につながったと感じています。

徹底した3S

こうした定着活動の土台として行っていたのが、3S活動です。

整理・整頓・清掃を徹底するという基本わ考えとしてできれば、どんな仕組みも現場で回すことができます。

3Sを徹底することで、

「決めたことを守る」

「決めた通りにやる」

という文化が根づいていきました。

なお、3S活動については別の章で詳しく説明します。

ISO9001を定着だけでなく、現場改善、品質改善を行う上で、欠かせない要素だからです。

まとめ ISO9001は目的ではない、手段です

ISO9001認証取得は、決して楽な取り組みではありません。

書類作成や審査対応よりも、人の考え方や現場の文化を変えていくことのほうが、はるかに大きな壁になります。

それでも、規格の意味を理解し、現場の実情に合わせて落とし込み、

できることから一つずつ積み重ねていけば、

ISO9001は「やらされ仕事」ではなく

現場で役立つ仕組みに変わっていきます。

重要なのは、完璧を目指さないこと、

できないことを責めないこと、

そして成果をきちんと共有することです。

小さな改善の積み重ねが、

結果として品質の安定と信頼につながります。

ISO9001は目的ではなく手段です。

自社の仕事をより良くするための道具として、

無理のない形で使い続けていく。

それが、長く続く品質マネジメントへの近道だと、

40年製造業の現場に関わってきた経験から強く感じています。

次回は、現場改善、品質管理の土台

「3S活動を現場に根付かせた具体的な進め方」

について、もう少し踏み込んで書いていきます

ReplyForwardAdd reaction

コメント

“ISO9001認証取得で現場が本当に大変だったこと【実体験】” への1件のフィードバック

  1. njengrjstvのアバター

    jrmsoytzjrwmunqgfuohsdjhrdfzgt

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です