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第1章|多くの現場で5Sが続かない理由
私がこれまで多くの製造現場を見てきた中で、
5S活動が続かない工場には、いくつかの共通点があると感じてきました。
そして、
どれか一つでも当てはまる場合、5Sは高い確率で形骸化します。
共通点① いきなり「5S」から始めている
まず、最も多かったのが、
整理・整頓・清掃ができていない状態のまま、いきなり5Sを始めているケースです。
たとえば、
- 不要な物が残ったまま
- 置き場所が決まっていない
- 掃除の基準が人によって違う
このような状態で、
「清潔を保とう」
「しつけを徹底しよう」
と言っても、しかし、続くはずがありません。
なぜなら、
土台ができていないまま、ルールだけを増やしている状態だからです。
つまり、5S以前の準備不足が原因なのです。
共通点② 目的が共有されていない
次に多いのが、5Sの目的が共有されていないことです。
「なぜ5Sをやるのか」
この問いに対して、はっきり答えられない現場の人も多くいました。
その際、よく聞いた言葉は次のようなものです。
- 上から言われたから
- 監査があるから
- 他社がやっているから
このような状態では、
5Sは“やらされ仕事”になってしまいます。
そして、
やらされ仕事は、必ず元に戻ります。
共通点③ 正しい状態が決まっていない
また、5Sが続かない工場では、
何が正しい状態なのかが明確に決まっていません。
その結果、
- どこに置けば良いのか分からない
- どこまで掃除すれば良いのか分からない
- 人によって判断が違う
といった状態が生まれます。
さらに、
注意されるたびに基準が変わるため、
現場は次第に疲弊していきます。
共通点④ チェックと振り返りがない
最初は、誰しも頑張って取り組みます。
しかし、やったかどうかを確認する仕組みがない現場も多くあります。
たとえば、
- チェック表が形だけ
- 振り返りをしない
- 良くなったか分からない
この状態では、
「やらなくても何も言われない」状況になります。
そのため、
5Sは少しずつやられなくなっていきます。
共通点⑤ 人の問題にしてしまう
最後に多いのが、
続かない原因を人の問題にしてしまうことです。
- 若手がだらしない
- ベテランが変わらない
- 忙しくて余裕がない
確かに、そう見えることもあります。
しかし、5Sが続かない原因のほとんどは、人ではありません。
つまり、
問題は「仕組み」にあります。
共通点のまとめ
以上を整理すると、
5Sが続かない工場では次の状態が重なっています。
- 土台ができていない
- 目的が共有されていない
- 正しい状態が決まっていない
- 守る仕組みがない
この状態で、
「気合」「意識」「根性」を求めても、
しかし、5Sは続きません。
第2章|徹底3S(整理・整頓・清掃)の本当のやり方【実体験】
私が業務改善で最初に徹底したのは、
**「とにかく3Sを中途半端にしないこと」**でした。
なぜなら、
3Sは簡単そうに見えますが、
基準を決めずに進めると、必ず形骸化するからです。
そのため、私は最初に3Sの考え方そのものを見直しました。
整理とは「分けること」から始まる
まず、整理とは単に捨てることではありません。
むしろ、分けることから始まります。
そこで私は、
現場にあるすべてのものを、次の3つに分けました。
- 「いるもの」
- 「いらないもの」
- 「いるかもしれないもの」
ここで重要なのは、
この「いるかもしれないもの」を曖昧にしないことです。
なぜなら、
ここが曖昧になると、整理は必ず失敗するからです。
いるものの判断基準は「使用頻度」
次に、「いるもの」については、
時間・日数・使用頻度でさらに分類しました。
具体的には、
- 毎日使うもの
- 週に数回使うもの
- 月に数回使うもの
このように分けました。
そして、
使う頻度が高いものほど手元に置く。
逆に、
使う頻度が低いものほど自分から遠ざける。
その結果、
探す時間・動く距離・無駄な作業が、
一気に減りました。
整頓とは「決めて、誰が見ても分かる状態にすること」
次に整頓です。
しかし、整頓は「きれいに並べること」ではありません。
つまり、
ルールを決め、ズレたらすぐ分かる状態にすることです。
そのため私は、
「いるもの」と「いるかもしれないもの」すべてに対して、
次の5つを必ず決めました。
定位置
まず、定められた場所に置くことです。
押しても引いても動かない状態にしました。
その結果、もし動けばすぐに分かります。
定量
次に、定められた数だけあることです。
工具や備品にはナンバリングを行い、
1つ欠けても分かる状態にしました。
定方向
さらに、定められた方向に置くことです。
向きがずれただけで、
見ただけで違和感を感じられる状態を作りました。
表示
また、その「もの」が何か分かる表示を付けました。
誰が見ても迷わないことを条件にしています。
標識
最後に、その「場所」が何の場所かを示しました。
つまり、
覚えなくても、見れば分かる状態です。
清掃とは「掃除」ではなく「異常に気づくこと」
一方で、清掃についても誤解されがちです。
しかし、清掃の目的は「きれいにすること」ではありません。
私が徹底した清掃の基準は、次の3つです。
- チリなし
- ホコリなし
- 汚れなし
この状態を常に保つことで、
油漏れ・傷・緩み・異音など、
小さな異常にもすぐ気づけるようになりました。
そのため、清掃は、
最も簡単で、かつ最も効果の高い点検活動だと感じています。
3Sは「全部そろって初めて意味を持つ」
整理・整頓・清掃は、
どれか一つでも欠けると機能しません。
しかし、
3つがそろったとき、
初めて現場は変わり始めます。
そして、この3Sがしっかりと土台にあったからこそ、
QC活動やISO9001の運用も、
形骸化せずに定着させることができました。
第3章「3Sをやらずに5Sをやると起きる現場の悲劇」
まず、3Sを十分にやらないまま5Sに進むと、
現場では決まって同じことが起こります。
実際に、
私自身、過去に何度もその失敗を見てきました。
掲示物とルールだけが増えていく
5Sを始めると、
たとえば標語、ルール、チェック表、写真など、
とにかく掲示物が増えていきます。
しかし、
整理ができていない現場では、
そもそも不要なものが残ったままです。
そのため、
見た目だけを整えても、
中身は何も変わっていません。
結果として、
守れないルールが増え、
現場は次第に疲弊していきます。
元に戻るのが当たり前になる
5S活動の直後は、
確かに一時的にきれいになります。
しかし、
数日もすれば元通りです。
なぜなら、
「捨てる」「減らす」という
整理が終わっていないからです。
つまり、
物が多いままでは、
どれだけ整頓しても、必ず崩れます。
守れない人が悪者になる
そして、
5Sが形骸化すると、
活動の矛先は「人」に向きます。
たとえば、
- なぜ守らないのか
- なぜ元に戻さないのか
といった指摘が増えます。
しかし、
仕組みが悪いのに、人のせいにされる。
この状態こそが、
現場のやる気を一気に奪います。
改善より管理が増える
さらに、
3Sができていない現場では、
5Sは改善活動ではなく管理活動になります。
具体的には、
- 注意
- 指摘
- チェック
が増えていきます。
その結果、
これらが増えるほど、
現場は5Sから距離を置くようになります。
5Sは「結果」であって「目的」ではない
本来、
5Sは「躾(しつけ)」を含めた
結果として現れる姿です。
そのため、
3Sが定着していれば、
自然と守られ、
特別な管理は不要になります。
私が学んだ教訓
結論として、
いきなり5Sをやると、
現場は必ず疲れます。
だからこそ、
先にやるべきは、
徹底した3Sです。
つまり、
捨てる・揃える・気づく。
これができて初めて、
5Sは意味を持ちます。
第4章3Sを現場に定着させる進め方【実体験】
3Sを定着させるために、
私たちが最初に取り組んだのは、トイレ清掃でした。
なぜなら、
トイレは部署や立場に関係なく、
全員が使う共有スペースだからです。
そして、
ここがきれいにならなければ、
現場全体の3Sは絶対に定着しないと考えました。
まず役職者全員で取り組む
しかし、
最初から全員参加にはしませんでした。
そこで、
まずは各部門の役職者が率先して行うことにしました。
なぜなら、
「3Sは大事だ」と言葉で言うだけでは、
現場には伝わらないからです。
実際に、
自ら手を動かす姿を見せることが、
現場を動かす第一歩になりました。
清掃場所を細かく分け、道具を準備する
次に、
トイレ清掃といっても、
「きれいにする」だけでは曖昧すぎると考えました。
そのため、
- 便器
- 床
- 壁
- 手洗い場
- ドア・取っ手
など、
どこを掃除するのかを細かく分解しました。
さらに、
清掃に必要な道具をすべて事前に準備しました。
これは、
「道具がないからできない」
という言い訳をなくすためです。
清掃の基準を明確にする
また、
清掃の基準は多くしすぎず、
次の4つだけに絞りました。
- チリなし
- ホコリなし
- 汚れなし
- ピカピカの状態
そして、
役職者全員で集まり、
この基準に従ってトイレを徹底的に磨き上げました。
その結果、
このときに仕上げた状態を
**「清掃の出来栄え基準」**としました。
写真で「正しい状態」と「手順」を残す
さらに、
磨き上げている途中の様子を、
清掃の順序に沿って細かく写真撮影しました。
そして、
その写真を使って清掃手順書を作成しました。
具体的には、
- どこから始めるのか
- どの道具を使うのか
- どの順番で行うのか
を明確にしました。
あえて、
清掃手順は細かく決めました。
なぜなら、
誰がやっても同じ結果になるようにするためです。
毎日やること・曜日でやることを分ける
しかし、
すべてを毎日やろうとすると、
必ず続かなくなります。
そこで、
- 毎日必ずやる清掃
- 曜日ごとに行う清掃
に分けて運用しました。
その結果、
無理のない仕組みとなり、
清掃は「特別な作業」ではなくなりました。
全員参加・チェックの仕組みを作る
その後、
決められた基準と手順に基づき、
全員参加で毎日トイレ清掃を実施しました。
さらに、
清掃を行ったかどうかを確認するため、
実施チェックリストを作成しました。
また、
清掃を行った人が、
次に清掃する人へチェックをお願いする
相互確認の仕組みにしました。
綺麗を維持すると「気づける」ようになる
このように、
毎日清掃を続けてきれいな状態を維持すると、
少しの汚れが目立つようになります。
そして、
この「気づける状態」こそが、
清掃の最大の効果です。
繰り返すうちに、
人は自然と
「汚したくない」
と思うようになります。
トイレ清掃から学んだこと
このトイレ清掃活動を通じて、
私たちは重要なことに気づきました。
それは、
- 現状を正しく把握する
- 悪いところを正しい状態にする
- 正しい状態にする方法を決める
- 実施して守る
- 守られているかをチェックする
という流れです。
つまり、
これはすべての業務改善に共通する考え方です。
徹底した清掃は「しつけ」になる
最後に、
徹底して清掃を行うことは、
「しつけ」そのものだと感じました。
その結果、
現場は自然と清潔になります。
そして、
徹底した3Sは、結果として5Sになる。
これが、
私の現場経験から得た結論です。
第5章|3Sが定着すると5Sは自然に始まる
まず、
3Sを徹底すると、
「5Sをやろう」と言わなくても、現場の行動が変わり始めます。
なぜなら、
3Sは日々の作業そのものを変える力があるからです。
ルールを作らなくても守られる
3Sが定着した現場では、
物の置き場・数・向きが明確になっています。
そのため、
ズレればすぐに分かり、
注意しなくても自然と元に戻ります。
結果として、
管理のためのルールは増えません。
注意や指摘が減る
5Sが形骸化している現場では、
注意や指摘が日常的に発生します。
一方で、
3Sが定着している現場では、
注意そのものが不要になります。
なぜなら、
異常に誰もが気づける状態ができているからです。
改善が日常業務になる
また、
3Sが土台にあると、
改善は特別な活動ではなくなります。
具体的には、
- 探す時間が減る
- 無駄な動きが減る
- 異常に早く気づける
といった効果が現れます。
そして、
こうした小さな改善が積み重なることで、
現場は自然と
「もっと良くしよう」
と考えるようになります。
5Sは「やらされる活動」ではなくなる
しかし、
3Sを飛ばして5Sを進めると、
5Sは管理や統制になってしまいます。
一方、
3Sが定着した現場では、
5Sは自分たちの活動になります。
つまり、
誰かに言われるからではなく、
自分たちがやりたいからやる状態になります。
この状態になって初めて、
5Sは本来の意味を持ちます。
5Sは目的ではなく結果
結論として、
私の経験では、
5Sを目的にすると必ず失敗します。
本来の目的は、
仕事をやりやすくすることです。
そのため、
3Sはあくまでそのための手段です。
そして、
3Sを徹底した結果、
現場が整い、
人の行動が変わり、
その姿が5Sとして現れます。
まとめ(結論)
まず、
業務改善を進めるうえで、
いきなり5Sから始めてしまうと、多くの現場は疲弊し、形骸化していきます。
なぜなら、
5Sは土台が整っていなければ、
続けることができない活動だからです。
そのため、
本当に必要なのは、
**徹底した3S(整理・整頓・清掃)**です。
具体的には、
整理で不要なものを減らし、
整頓で誰が見ても分かる状態を作り、
さらに、清掃で異常に気づける現場にします。
そして、
この土台があって初めて、
改善は続くものになります。
また、
トイレ清掃から始めた3S活動は、
単なる掃除ではありません。
つまり、
現状を把握し、
正しい状態を決め、
その状態を守り、
守られているかを確認する、
この一連の流れを現場に習慣として根づかせる取り組みでした。
その結果、
徹底した清掃は「しつけ」となり、
現場は自然と清潔になります。
そして、
徹底した3Sは、結果として5Sになる。
これが、
私の現場経験から導き出した結論です。
最後に、
業務改善に近道はありません。
しかし、
3Sという確実な一歩を踏み出せば、現場は必ず変わります。
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